瞬時電圧・電力変動解析ソフト88XXP&Q.exeの取扱説明

 このソフトは、HIOKIのメモリーハイコーダ 8808,8835,8840,8841,8842,8861,MR8880,MR8847のいずれかで測定した電圧電流の波形データ(バイナリ形式)から、電圧・電流実効値、有効・無効電力を10ms間隔程度で変換したり、これらの変化量のFFT解析等を行うソフトです。(演算結果はCSV形式となります)
 また、メモリハイロガー8420,8421で測定したデータをCSV変換したり、1時間毎の統計処理ファイルを作る機能もあります。

処理項目 処理内容
実効値演算 波形データから、一定間隔で、三相電圧・電流実効値、有効・無効電力の平均を演算します。
50・60Hz双方のデータが扱えるようにするため、三相回路専用となっています。
平衡三相回路は、どの時間断面を切っても、三相実効値、有効・無効電力値が一定の値となる性質を利用しています。
風力発電等の起動特性やSVGの追従特性試験に最適です。
測定器の入力は、1-2chが電圧、3-4、5-6、7-8、・・・15-16が電流入力となり、最大16chで7回線分の測定が行えます。
変換間隔は10ms単位に設定できますが、この値に0.1と入力すれば1ms単位で変換します。
しかし、1サイクル以下で変換すると、不平衡分がデータに現れ、わかりにくい値となります。その場合は「10ms移動平均誤差補正」機能を使うと誤差が小さくなります。
測定器には三相回路の各2相分が入力されていますが、内部では3相分を演算で求めています。線間電圧から相電圧も計算しています。
基本波や第5次高調波分の抽出が可能です。
  • 極性反転チェックはクランプの向きが反対の時指定します。
  • Y-Δ+30またはY-Δ+30チェックは、Y-Δ変圧器の1次側で電圧を、2次側で電流を測った時に指定します。
  • 位相反転チェックを付けると無効電力の正負が反転します。
  • 基本波解析チェックを付けると、基本波分の値が出力されます。
  • 5次高調波解析チェックを付けると、第5次高調波分の値が出力されます。
  • 相別出力チェックを付けると、相別の値が出力されます。電圧出力は線間電圧と相電圧を指定できます。
  • 周波数変動や60Hz地域の使用で誤差が発生する場合は「10ms移動平均誤差補正」チェックを付けて下さい。
  • 補償前電圧計算は、 SVGやSVCの出力から計算する機能で、出力フィーダと定数を指定します。
  • 理論補償値計算は、負荷の電力変動をうち消す補償値を求めます。負荷測定フィーダと定数を指定します。
  • 周波数チェックを付けると、ゼロクロスから周波数(変動)を求めます。
  • 極性や位相、相回転をチェックするためのベクトル表示機能があります。
生データ出力 波形データを、そのまま、または、間引いてCSVファイルへ出力する機能です。
RMS(実効値)測定データの場合は、最大・最小値が保存され、統計ファイルが出力されます。(全ファイル処理)

時刻統計チェックをつけると、RMS測定データと8420-21データでは、1時間ごとの統計処理ファイルを作成することが可能です。

PQデータFFT 実効値演算値をFFT(高速フーリェ変換)処理し、変動周期を求めます。
フリッカ成分(電圧変動周期や有効・無効電力変動周期)の抽出や、非整数倍高調波成分の検出が出来ます。なお、儼10の視感度計数は、下記の多項式で近似値が求められます。(f:周波数)
-0.0000042171*f^4 + 0.0004697422*f^3 - 0.0174474676*f^2 + 0.2249512718 *f + 0.0444742425
元データは、測定開始箇所から、2^nが最大取れる範囲となり、サンプリング数によりnは最大16まで演算します。(相当細かいFFT処理です)
データの検出方法から、基本的には基本波成分は除かれ、直流分として平均値が与えられます。
CHデータFFT 各CHの波形データをそのままFFT処理します。
伝送路のノイズ特性や、伝送特性測定に便利です。
こちらでは、基本波成分も分析されます。
  • 出力は縦軸に周波数、横軸に振幅と位相がch毎に出力されます。
  • サンプリングデータのビット数は16を越えない最大値が指定しされます。
時間移動FFTオプション
時間移動FFTオプションのチェックを付けることにより、左図のような入力項目が現れ、時間による周波数分布の変化を解析できます。
  • サンプリングデータ数をビット数(2の何乗であるか)で指定します。
  • 時間移動の間隔をサンプリングデータ時間を基に指定します。
  • 出力する帯域を指定します。
  • 複数の帯域データを合成する場合は分割周期を指定します。
  • 出力は縦軸に時間、横軸に周波数になり、ch毎にファイルが分割されます。
  • 統計ファイルは、最大値と平均値がch毎に別ファイルで出力されます。
選択項目 選択ファイル
8840波形 拡張子が*.WAVを抽出します。
8808・35・41波形 拡張子が*.MEMを抽出します。
自  動 データの中身を確認し、どんな拡張子であっっても判定します。
判定後は、自動的にデータ項目が選択されます。
8808・35・41RMS 拡張子が*.RMSを抽出します。
8420・21ロガー 拡張子が*.MEMを抽出します。

時刻統計:1時間ごとの最大・最小・平均値のデータを出力します。
       最初に1年分のデータテーブルをメモリー上に確保するため、統計年の入力が必要。

 ドライブ・ディレクトリー・ファイルを選択すると、測定器の設定条件が現れます。

 実効値データ変換では、PT比、電流クランプレンジを設定します。
 電流クランプは、レンジのフルスケール値が0.2Vの物を前提に換換算してください。
 出力間隔、位相反転、50Hz基本波や第5次高調波解析のチェックを付けます。
 「位相逆回転」チェックは、相回転により無効電力の正負が反転するためのチェックです。(ベクトル表示で確認できます)
 クランプCTの方向が反転して、有効電力の正負が反転した場合は、「極性反転チェック」を付けて入力してください。
 Y−Δ(Δ−Y)変圧器の1次と2次側で電圧・電流を測定した場合は、「Y-Δ+30」または「Y-Δ+30」チェックで位相を補正します。

 生データ処理では、下図のように乗率とデータ出力範囲が現れます。これらを設定してください。

 

 これらの処理による出力ファイル名は、トリガー時刻をファイル名として自動的に作られます。(変更可能。全ファイル処理では不可)

 フォルダー内にある、測定データ全てを一括して変換する作業です。

 これを指定すると、実効値演算および、RMSデータ処理では、変化データの他に統計ファイル(ファイル保存間隔単位)も自動作成されます。

 時刻統計チェックをつけると、RMS測定データと8420-21データでは、1時間ごとの統計処理ファイルのみが作成されます。

波形 

 波形表示ボタンをクリックすると、波形の表示機能があります、縦罫線は10ms、横罫線はAD変換器の出力で、0,±800、±1600のポイントです。(測定器のDVIは80の倍数です。)

 出力項目にチェックを付けて表示ボタンを押すと表示します。乗率指定も可能です。このとき、ch2のデータは位相を反転して表示します。

 下部スクロールバーで表示位置を指定します。
 再生アイコンを押すと、20ms間隔で連続して波形を表示します。

 未測定相のS相電流(-ch3-ch4)、未測定V(ch1-ch2)もチェックを付けることにより表示します。

 S相基本波チャックは、線間電圧VrsとVtsの値から、S相の相電圧を求め、フーリェ変換により基本波波形を求めるもので、このチェックを付けた条件で、波形表示をクリックすると、S相電圧のゼロクロスからの位相差が求められます。
 この機能は、風力発電ソフトスタート等のゲートコントロール角を求めるときに使用します。

 画面コピーは、波形データをクリップボードにビットマップ形式で張り付けます。


 メモリーハイコーダの時間軸のサンプリング速度は、8808が80回/Divその他は、100回/Divとなっています。
 実効値の演算には、本来1サイクル当たり数回以上のサンプリングが必要ですが、このソフトでは三相実効値で演算しているため、サンプリング数には拘りません。
 仮に、8841で10S/DIVに設定しても100ms間隔で実効値を出力することが出来ます。
 しかし、高調波や基本波成分を抽出するには、最低でも1サイクル当たり20回のサンプリングは必要です。
 このため、50Hzで8841で解析を行う場合、100ms/DIV以上の速度が必要です。

 ※ 測定値の考え方

三相電圧の任意のポイントの波高値をVu,Vv,Vwとすると、その実効値は
     となります。

 電圧実効値はで表され、総合の高調波はで表されるためと置き換え可能です。

 このため、総合電圧歪み率はとなり、基本波と実効値がわかれば求める事が出来ます。

 


先頭へ戻る

電力技術者のページ